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先代である父はもともと消防庁に勤めておりました。木造家屋が多く、まだ火事が多かった時代のことです。
看板の色のオレンジは、先代が好きだった色です。もしかすると、消防士をやっていたことから赤い色にしたのかもしれません。
三光堂という店名をつけたのは、「三」という数字は「崩れない」からです。三角形も三角関係もそうですし、古くからの教えを見ても、「三」という数字には何か特別な意味があるように思います。それに「暗いより明るいほうがいい」ということで、「光」の文字を加えました。
おかげさまで2018年で開店60周年になりました。何よりもみなさまの支えあって、これほど長い間お店を続けることができました。
現代は、パソコンやインターネットができて、とても便利になりました。
私もスマートフォンを愛用していますし、そうしたものの恩恵をたくさん受けています。だからこそ、こうしてウェブサイトを通じて、お客様とコミュニケーションをとることもできます。
外国人のお客様もたまにこられますが、その時私はスマートフォンの音声翻訳サービスを使って会話をします。デジタル技術は、とても素晴らしいものだと思います。
でも、言葉は通じなくても、お客様はこんなことしたいのかなとなんとなくわかったり、ジェスチャーで伝わることもあります。そんな中、不思議と生い立ちの話をはじめるお客様もいらっしゃいます。
手でつくったものも、同じく不思議なものがあるように思います。
肉筆の手紙や、思い切って書いた書、型を崩したサインはなぜか印象に残ります。脳裏に焼き付いて離れない絵があります。
何かをつくるということは、自分にしか作れないこと、自分しか出せない答えを出すことのように思います。しかも、自分の独特のものでありながら、それを見て、わかって応えてくれる人が必ずいるのではないでしょうか。
そういうことは、うまいとかうまくないとかでは全然ないと思います。
それはノスタルジーかもしれませんし、面倒くさいことかもしれません。単なる文具屋の商売文句かもしれません。でも私は、そのようなことの存在を信じたいと思います。
私の母は、八百屋の出で、人間が好きでした。だから父とこのお店を開きました。私も、人間が好きだから続けてこれたのかもしれません。
三光堂は、文具を通じて、お客様の「こんなことしたいな」のお役に立ちたいです。
何気ない日常の会話から、文具のご相談まで、お客様をお待ちしております。
店主 渡辺